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Posted by チェスト at

2014年03月29日

ローラの告白

LOVE

「これは、他のカーテンも急いで商品化しないとね」
スカーレットの商売っ気に驚き、三姉妹は大急ぎで自分たちのカーテンにも着手し始める。

青いバラをスマイルに頼みに行く前の晩に、キャンディはローラにあることを相談した。
「スマイルは、とってもローラ姉さんのファンなの。このカーテンが出来たら、一度お茶くらいしてあげて」
ローラは、くすくす笑う。
「キャンディは、妙なところで鈍感ね」
「え?」
「スマイルは、あなたのことが好きなのよ」
そう言われて、キャンディは溶けてしまいそうなほど真っ赤になる。
「うそうそ!」
「心理学専門の私の目に間違いはないわ。それに・・・」
そこで、ローラは少しためらうが、キャンディの背中を押そうと、事情を話す。
「誰にも言っていなかったけど、私には決めた人がいるの」
「えええ~!?」
「いつかソフィにも言わなきゃと思ってるんだけど、今、彼女はお取り込み中だから」
ローラはいたずらっぽく微笑む。ローラには、心理カウンセラー時代から共に働き、尊敬している精神科医がいるらしい。
「私は‘カーテン’で、だけど、彼と一緒に、一生、人の求めるものを探し当てるサポートをしていきたいの。それが私の仕事であり、夢なのよ」

ローラの告白を胸に、複雑な気持ちで、翌日、キャンディはお花の依頼をしにスマイルのワゴン店に向かう。なぜかいつもよりぎこちないキャンディを見て、スマイルは不思議そうにする。
「・・・なんか悪いものでも食べた?」
スマイルの心配の仕方がツボに入り、キャンディは大笑いする。そして、肩の力を抜いて、こう尋ねた。
「スマイルは、3つのカーテンのうち、どれが好き? 1番、スマイルのバラを使ったシックな青いバラ柄のカーテン。2番、しゃぼんの香りをイメージしたピンクとホワイトの水玉カーテン。3番、甘いお菓子の匂いがしそうな、ポップでいろどりどりの飴柄のカーテン」
スマイルは、おかしそうに笑う。
「君たちのカーテンだろ? どれも好きだよ」
「どれも・・・?」
キャンディの不安そうな様子に、スマイルは、とびきりの笑顔で、しかも男らしくきっぱりと答えた。
「でも、僕の部屋に欲しいのは甘くてポップなキャンディのカーテンかな」
キャンディは、しばらくポカンとした後、突然スマイルに飛びつき、彼の頬にキスした。
「スマイル、大好き!」
「僕もだよ、キャンディ」  


Posted by 弘せりえ at 16:53Comments(0)短編

2014年03月28日

わびさびカーテン

紅葉

すでにローラはローズの香りで、シックなブルーを基調にしたバラの花柄を考えている。キャンディは、甘いお菓子の香りで、ポップで色とりどりな飴の模様に決めている。それぞれ、染色の原料には実際のものを使うので、ブルーのバラと、大量の飴の準備に取り掛かっている。ソフィのカーテンだけ、まだ決まっていなかったのだ。

「そうね、ソフィのイメージだったら、ベイビーピンク。それにフワフワした白いしゃぼん玉の柄はどうかしら?」
その晩、ローラも相談に加わり、そう提案する。染色は、実際ドルフィンが使っているせっけんでしようとソフィが言ったとき、ローラとキャンディは目を合わせる。
「すてきね、ソフィ! 賛成だわ」
二人は声をそろえてソフィを後押しした。

ドルフィンから、いろはのカーテンの染色ができたと連絡が入り、ソフィは再び彼の工房に足を運ぶ。最後の仕上げを行うためでもある。お香で染めたカーテンは三姉妹が意図した、日本のわびさびを見事に表現していた。薄い茶色と緑が絶妙に混じり合った生地に、ソフィは、紅葉の葉を並べていく。

まるで、空から舞い降りてくるかのような配置で、今度は押し花の要領で、紅葉の色と形を生地に移してもらう。その紅色とくっきりした紅葉の形は、ドルフィンの手で完璧に生地へと姿を移した。

それが乾くまで半日ほどかかるということで、夕方、ドルフィンはソフィをディナーに誘った。二人はお互いの仕事についてや、将来の夢を語り合った。お互いにできないことを相手がフォローできる。それは三姉妹とスカーレットとの関係のようで、すっかりドルフィンと意気投合したソフィが、出来上がったいろはのカーテンを持って帰宅したのは、かなり遅い時間だった。

翌朝、ローラもキャンディも、その仕上がりに感心した。まだ子供のいろはには大人っぽかったが、東洋で生きる女性の理想像が、そしてその香りが、カーテンから匂い立つようだった。

それをスカーレットに送ったところ、彼女は大絶賛してくれ、いろはの部屋に使うと約束した上で、さっそく自分のブランドショップのHPにスカーレットのカーテン店を紹介して、いろはカーテンをUPした。  


Posted by 弘せりえ at 13:30Comments(0)短編

2014年03月27日

恋の予感

恋の予感

三姉妹はいろいろ語りあった。それは、まだ赤ちゃんのいろはについてではなく、スカーレットの娘、いずれは母親に負けないくらい輝く女性になろうであろう、いろはについて。香りは、日本のお香をイメージした。東洋的で重みがあり、そしてどこか懐かしい上品な香り。生地は、本物のお香で染めることで、少しでもその香りを表現することにした。また、スカーレットの紅と、日本のイメージは必須だ。それには、ソフィが、紅葉の柄を提案した。
「メープルの葉を、日本では紅い葉って書くんだって」
メープルより小さく、形のくっきりした紅葉は、日本人とのハーフ、いろはのイメージに近い感じがした。

スマイルに本物の紅葉の葉を入手してもらい、ソフィは染色に使うお香とカーテンと紅葉をもって、ドルフィンの工房を訪ねた。タニアのカーテンのときは、カーテン店にきてもらったが、ソフィのほうがドルフィンの工房を訪ねるのは初めてだ。そこは、居心地のいい温かな工房だった。染料などの独特の匂いもせず、逆にお風呂上がりのような爽やかな香りがする。そのことについて尋ねると、ドルフィンはうれしそうに笑った。
「染料のツンとくる匂い、僕も苦手でね。香りのいいせっけんで、いつも手を洗っていたら、こんな香りがしみついたんだ」
その話になんとなくドキッとしながら、ソフィは依頼のものをドルフィンに渡して説明する。ドルフィンは楽しそうにソフィの話を聞きながら、最後にこう言った。
「ソフィ、このカーテンが出来たら、一度、ご飯でもいこうよ」
ソフィは、ドルフィンの工房の香りに胸いっぱいになりながら、うなずいた。

「ねぇ、キャンディ、せっけんの香りって、どんなイメージかしら?」
店に戻ったソフィは、どこかフワフワした感じでキャンディに尋ねる。キャンディはさりげなく、ソフィの額に手を当てる。
「・・・熱はない、か。とすると、これは、恋の予感」
ぶつぶつ言っているキャンディの言葉も、ソフィの耳には入らないようだ。キャンディは真剣に考える。
「・・・それはきっとロマンチックなイメージ。しゃぼんの泡で・・・水玉で・・・」
「しゃぼん? 水玉?」  


Posted by 弘せりえ at 15:10Comments(0)短編

2014年03月25日

香り立つカーテン

バラの香り

スカーレットのリクエストを受けて、さっそくソフィは‘香り立つようなカーテン’の作成に取り掛かる。カーテン生地に長持ちする香料を混ぜ込むという手もあったが、それでは芸術ではない。実際香るのではなく、視覚的に香り立つのが感じられるようなカーテン。そんな作品をめざしていく上で、ソフィは最近得た経験上、香りのいい花などから抽出した色で、カーテンを染めることがベストだと思った。

その案を、ローラとキャンディに相談する。キャンディは大喜びで、スマイルとドルフィンに、また手伝ってもらおうと提案する。一方、ローラはその意見に賛成した上で、少し考え込む。
「・・・タニアの時は、彼女独特の世界観があり、紫で銀河を表現して、成功した。でも、香りって、どんな色かしら? いえ、どんな色からどんな香りを連想する?お客様は、どの香りを好まれるかしら」
ソフィは驚く。
「ローラは、もしかして、何種類もの香りと色を考えてる?」
ローラはうなずく。
「だって、ローズの香りだけを求めてくるお客さんばかりじゃないでしょ? ジャスミンや金木犀、それにピーチやオレンジ・・・もしかしたら甘いキャンディの匂いがいいという子供さんもいるかもしれない」
キャンディはうれしそうに笑う。
「キャンディの香りをイメージしたカーテンの名前は、`Lovely Candy’にしてね」
ちゃっかりしたキャンディに姉二人は笑う。が、ソフィが先にハタと現実に戻った。
「でもね、世界中の香りを表現するのは、さすがに大変! だから、今回作るものは、まず3つくらいに絞ってほしいの」
キャンディはうなずく。
「`Lovely Candy’はハズせない。あと2つは、姉さんたちの好きな香りでいいんじゃない?」
「・・・キャンディみたいに自分の名前を付けるのは、ちょっと照れるわ」
ソフィの意見に、キャンディはふくれる。
「私はたまたま、甘い香りの名前だったから・・・」
そして、姉たちを見渡して、キャンディは考える。
「そうねぇ、ローラは、やっぱりローズの香りかな。ネーミングは`Rosy Rola’で決まり!ソフィは・・・」
そう言いかけたキャンディに、ソフィは待ったをかける。
「私たちのカーテンは、商品化を考えてから! まずはいろはのカーテンを作る約束を果たさなきゃ」  


Posted by 弘せりえ at 14:22Comments(0)短編